かおりの食慾

Twitterで書ききれないことや、日記のようなものもこちらに。明日が今日よりも素敵な日になるように。

夏でこそのお話

今週のお題「怖い話」


夏なので、ちょっとだけ怖そうなお話でも…

前の会社で働いていた時の先輩のお話です。
一戸建ての家にご両親とお祖母さんの4人で住んでいた先輩は高校生になったと同時に、自分の部屋が欲しいとお願いしたところ、一つ部屋を貰えたそうです。
その部屋は、お祖母さんが趣味で何十年もかけて作ってきた日本人形を飾ってある部屋で、棚に日本人形が何十体と飾ってあったそうです。

昼間は先輩も学校に行っているので気にしなかったそうですが、やはり夜寝るとき、ぼんやりと人形の白い顔が視界に入るのが怖かったそうで、棚の前にカーテンレールを取り付け、カーテンを引いて完全に人形達を隠してしまいました。

カーテンを引いて1週間ほど経ったとき、先輩が初めて金縛りに逢い、目以外が全く動かせなくなったと。
すると、先輩は「目が勝手に棚の方を見た」感覚で棚から目が離せなかったそうです。
棚にはカーテンをしっかり引いていたのに、何故か少し開いていて、その隙間から、1体の人形の全身が正面からしっかり見えて目が合っていたと…

先輩が叫ぶと金縛りは解け、そのまま眠ってしまったそうです。

翌日、棚を見るとやっぱりカーテンが少し開いていて夜に見えた人形がいたのですが、その人形だけがベッドで寝る先輩を見るように、体の向きが他の人形と違って斜めに立っていたそうです。

先輩は、何か謂れのある人形かと思い、お祖母さんに尋ねました。「あの人形なに?」と。
するとお祖母さんは先輩が示した人形を見て「私が作った人形じゃない」と断言したそうです。
先輩は「何十体も作ってきたんだし、忘れてるだけだろう」と言いましたが、お祖母さんは「作者は作ったものを覚えてる。それにこの人形の顔は、私の人形と作風が違いすぎる」と…
確かに他の人形と見比べてみても、目の形や輪郭に始まり、やはりどう見てもその人形だけ、お祖母さんが作ったという人形と顔が違っていたそうです。
ちなみに、お祖母さんはご自分で人形を作れたので、お店で人形を買うことはなかったそうです。


その人形はどこの人形で、なぜ一緒に棚に立っていたのでしょうね。